OPENCLAW 設計 & リサーチ

worksのように部門で回す ——
司令塔設計と海外トップユーザーの流儀

「各チャンネル=各作業部門、それを統括する総合管理」という構想を、OpenClawの正規機能でどう体系化するか。海外のエンジニア・SNSマーケ・デザイン分野のトップユーザー事例と突き合わせてまとめた設計レポート。

SUMMARY

結論を先に3行で

DESIGN

構想 → OpenClawの仕組みへの翻訳

worksの「フォルダ」に当たる単位を、OpenClawでは次の5点セットで表す。この5つが揃ったものが「1部門」。

worksでの感覚OpenClawでの実体役割
フォルダ(部屋)Discordチャンネル部門のオフィス。会話とcron配送の宛先
担当者の顔botアカウント1ペルソナ1bot。bindingsはbotアカウント粒度(7/21決定)
担当者の頭脳agents.list のエントリ独立した文脈・個別のモデル設定が可能
フォルダの中身workspace(git管理)小さなAGENTS.md+IDENTITY+部門専用メモリ
フォルダ間の受け渡しpipelines.json の route配送の宛先=組織図の正

目指す組織図(完成形)

総合管理チャンネル(main)=司令塔受付・振り分け/承認ゲート/報告集約/観測
─── handoff配送レーン(5分tick・課金ゼロ)───
ブログ執筆agent: blog(独立済)
動画編集agent: video(独立済)
広報戦略X投稿3スキル+YTコメント
運用戦略/script+週次KPI
リサーチトレンドDB+x-research
メール閲覧・下書きのみ(削除禁止)
エンジニア開発工房(~/dev)
職場メール別サーバー・完全分離

司令塔の仕事は5つに限定する(これが海外トップ勢と一致する最重要原則):①受付・振り分け(handoffで部門へ配送)、②経路管理(pipelines.jsonが組織図の正)、③承認ゲート(公開・課金の手前だけ止める)、④報告集約(部門の完了報告は総合chへ)、⑤観測(oplog・Office・週次KPI)。司令塔は実務をしない

STATUS

現在地 —— すでにどこまでできているか(2026-07-22 実測)

部品状態備考
agents.list 分離3/9main+blog+video。残り6アカウントはmainに同居
配送レーン(handoff dispatcher)稼働中launchd 5分tick・朝の企画会議ライン(P1)が毎朝一巡
承認ゲート稼働中下書きのみ→承認後に公開。X投稿・YTコメントで実運用
定時業務(cron)7本メール2種・トレンド・企画会議・x-research・YTコメント・週次KPI
観測・自己検証稼働中health_check毎朝/oplog/OpenClaw Office/テスト283件
Phase 1 実走スモーク未実施#ブログ執筆・#動画編集に実投稿して起動確認(残タスク)

部門独立の進捗(agents.list分離)

3 / 9 エージェント(司令塔含む)

ROADMAP

ロードマップ —— Phase 1の続きとして進める

フェーズ内容ポイント
Phase 1 済blog / video 独立(7/21)cron依存ゼロの2部門から。翌朝観測PASS。残=実走スモーク
Phase 2広報・運用戦略の独立cronあり部門=cron側にagent固定の指定が必要。中継ワーカーは絶対パス起動なので分離と独立に動く
Phase 3リサーチ・メール系の独立メールの禁止事項(削除・送信禁止)は必ず部門AGENTS.mdへ移植してから切り替え
Phase 4mainの司令塔専任化AGENTS.md(現2万字超)を司令塔規則だけに痩身。既存計画のAGENTS.md分割と合流

各フェーズの受け入れ条件は今まで通り:テスト一式GREEN+翌朝観測PASS+relay実走スモーク1回(7/22の障害の教訓:OpenClaw本体更新後は必ず実走を1回入れる)。

部門増設キット —— 新しい作業分野を足す手順(テンプレ化)

「デザイン」「新規事業」など部門を増やしたくなったら、毎回この5手順。将来は /add-department としてスキル化する価値あり。

# 1. Discordにチャンネルとbotを用意(トークン取得→openclaw.jsonに登録)
# 2. エージェントを作って紐付け(workspaceが自動生成される)
openclaw agents add design --bind discord:ninth
# 3. workspaceに最小構成を置く
#    AGENTS.md(役割・禁止事項・報告先=総合ch・RELAY_DETACH=1テンプレ)+IDENTITY.md
# 4. 動かし方を選ぶ
#    会話型 → skill_relay.sh 複製型のworkerを1本
#    定時型 → cron追加(agent固定を忘れない)
# 5. 組織図に登録して検証
#    pipelines.json routes追記 → checklist → ops/tests追加 → 翌朝観測

Mac mini 16GBの制約:部門を増やしても常駐するのはgateway1つなので数自体は問題ない。重いのは同時実行。動画レンダー等の重処理は直列化(maxConcurrentを一時的に絞る)か、将来の2台構成(制作機への委譲)で逃がす。

RESEARCH 1 / ENGINEERING

海外トップユーザーの流儀 —— エンジニア分野

開発者本人(steipete)——「短い指示+検証は環境に任せる」

ターミナルで3〜8個のエージェントを並列稼働。プロンプトは1〜2文+スクリーンショットと極端に短くし、代わりに800行のAGENTS.mdで規約を持たせる。エージェント自身にローカルでビルド・lint・テストまで完結させ(CI待ち約10分/回を排除)、時間の約2割を重複・デッドコード除去に充てる。「読まないコードを出荷する」と公言し、その分事前プランニングと検証ループに投資する。

出典: steipete.me「Just Talk To It」/Pragmatic Engineerインタビュー

「Kev's Dream Team」—— 14体編成・司令塔はコードを書かない

1ゲートウェイに14以上の専門エージェント。統括役Kevの原則は「NEVER writes code —— 委譲と統合だけ」。コーディングはCodex系、リサーチは安価なFlash系、ビジュアルはGemini系と部門ごとにモデルを変えるmodel arbitrageでコストを制御。司令塔はサンドボックス無し・実働部門は強制サンドボックスという役割別の安全設計。

出典: adam91holt/orchestrated-ai-articles(GitHub)

hub-and-spoke構成(TheSethRose)と型付きパイプライン(jdrhyne)

TheSethRoseは統括だけホスト常駐、実働(コーダー・リサーチ・cron担当)はDocker隔離。「サブエージェントは記憶を持たない。必要な文脈は統括がプロンプトに全部詰める」を設計原則に明文化。jdrhyneは3台のマシンで10体超を日次点呼し、自由形式のLLM連携を型付きパイプライン+承認ゲート+状態追跡に置き換えるテンプレ(lobster-workflows)を公開。約33種の自作スキル群も公開している。

出典: TheSethRose/OpenClaw-Advanced-Config/jdrhyne/agent-skills(GitHub)

イベント駆動の定番パターン

  • Jiraチケット→実装→PR作成→別のAIがレビューという一連パイプライン(geoffmunn, Hacker News)
  • Sentryのエラーwebhook→夜間に調査・修正→朝にはPRができている自動バグ修正(nateliason)
  • 音声だけでビルド失敗診断→設定修正→再デプロイ→PR提出まで行うハンズフリー運用(公式showcase)

出典: Ask HN「Who is using OpenClaw?」/openclaw.ai/showcase

RESEARCH 2 / SNS & OPS

海外トップユーザーの流儀 —— SNSマーケ・運用管理

ほぼ全事例が同じ骨格:収集 → 下書き → 人間の承認 → 配信。「AIは下書きまで、公開ボタンは人間」が上級者ほど徹底されている。

Alex Finn —— チャンネル連鎖と「Mission Control」

統括エージェント「Henry」の下に開発・リサーチ・執筆チームを編成。Xでバズった投稿を2時間おきに収集→背景分析→台本・ツイート案作成というDiscordチャンネル連鎖(あるchの完了が次のchを自動トリガー)でコンテンツを量産し、本人はDiscord上でApprove/Rejectするだけ。承認されたものだけサムネイル工程へ進む。カレンダー・メモリ検索・エージェント在席表示を備えた自作ダッシュボードで全体を監視。外部スキルは直接入れず、AIにレビューさせてから自作版に置き換える方針を明言。

出典: 本人動画の書き起こし(GitHub)ほか解説記事

Jenny Ouyang —— cron 12本で回すニュースレター運営

購読フィードのスキャン、記事インデックス構築、リサーチダイジェスト、SNS定期投稿、Search Console分析、サイト監査まで12本のcronジョブで自動化。受け口はTelegramの自分宛チャット。サーバーはループバックのみにバインドし、SOUL.mdに「第三者スキルのインストール禁止」を明記してサプライチェーンリスクをゼロにしている。

出典: Build to Launch(Substack)

Violetta Bonenkamp —— 6体のSEOチームを15分ずらしで段階起動

戦略・キーワード・長文執筆・編集・リンク構築・分析の6ペルソナでコンテンツチームを構成。常時稼働ではなく15分間隔の段階起動で競合を回避。進行中タスク・日次ログ・長期知識を分けた多層メモリと、毎日の自動スタンドアップ報告(完了/進行中/ブロック/承認待ち)で回す。「最終判断は人間」「2〜3体のスモールスタート推奨」。

出典: blog.mean.ceo

Deepak Baby —— 曜日固定の週次ニュースレターパイプライン

平日:WhatsAppの自分宛チャットに記事URLを投げると自動で蓄積。金曜:cronがRSS8本を走査して候補を要約送信。土曜:全ソースをマージ→重複排除→15本に絞り→静的サイト形式で生成→gitブランチを切ってPRを作成。月曜:本人がPRを確認してマージ→自動デプロイ。「レビューはPRで」という開発の型をコンテンツ運用に持ち込んだ好例。スキルはコードでなくYAML+Markdownの「プレイブック(指示書)」形式。

出典: deepakbaby.in(実名ブログ)

Matthew Berman —— 分析・提言・監査までエージェント化

メール・カレンダー・会議録を自動取り込みするパーソナルCRM、URLを投げると保存・自然言語検索できるナレッジベースに加え、YouTube/X/メールの実績を8体並列の「ビジネス諮問委員会」が分析して優先度付き提言。毎晩3:30に攻撃・防御・プライバシー・運用の4観点でコードを監査する「セキュリティ評議会」まで常設。承認キューはチャット経由でタスク管理ツールに連携。

出典: 本人のLinkedIn投稿

RESEARCH 3 / DESIGN & CROSS

海外トップユーザーの流儀 —— デザイン・クリエイティブと分野横断

コンテンツファクトリー型 —— #research → #scripts → #thumbnails

コミュニティ最大級のユースケース集(★3万超)に載る定番構成。毎朝リサーチ部門がトレンドと競合を分析して機会トップ5を投稿→執筆部門が下書き→サムネイル部門が画像生成AIでビジュアル制作、とDiscordチャンネルを工程として連結する。いまの「朝の企画会議ライン」と同じ発想で、工程を1段(ビジュアル制作)増やした形。

出典: hesamsheikh/awesome-openclaw-usecases(GitHub)

メディア企業Every「Plus One」—— 6体を実在の担当者に紐付け

バグ分類・マーケメール・グロース・記事制作・リスト管理・ビジュアルの6体を編成し、各エージェントを実在の社員に1対1で紐付けて責任者を明確化。クリエイティブ責任者の下にビジュアル担当エージェントを置く。「エージェントにも上司を付ける」という運用は総合管理ch方式と同じ。

出典: every.to

デザイン系ツールの実例

  • Anti-AI-slop設計のフロントエンド生成スキル(kesslerio):「Interフォント・紫グラデ・中央揃え」のようないかにもAI生成な紋切り型を明示的に禁止するルールをスキルに焼き込む —— worksの「AI臭いCSS禁止」方針と完全に同じ思想が海外でもスキル化されている
  • ComfyUIブリッジ:画像生成ワークフローをスキル化し、生のノードグラフを触らせず制御されたパラメータだけ渡す
  • Canva / Figma はMCP経由で接続(OAuth肩代わりサービス経由)。ただし「これで案件を回したデザイナー個人」の一次情報は現状ほぼ無し —— デザイン分野はまだ開拓余地が大きい

出典: kesslerio/HuangYuChuh/Composio(各GitHub・公式)

Tommaso Nervegna —— Mac mini M4上の8体組織(構成が近い好例)

同じMac mini M4で、統括・オペレーション・夜間収集・執筆・SNS・グロース・ナレッジ・エンジニアの8体を常駐。通信ルールは「委譲は統括経由のみ」「共有は読み取り専用のファイル経由」「重要事項以外は無言」と絞り、00:30収集→02:00下書き→07:00朝ブリーフの夜間パイプラインを運用。教訓として「1エージェント1タスクから始めよ」を挙げる。

出典: nervegna.substack.com

横断で共通する道具立て

  • メモリは3層(公式推奨):MEMORY.md(耐久的事実)+日次ノート(詳細ログ)+定期的な蒸留。承認要件や期限付き制約は「アクション境界付きメモ」として書く
  • HEARTBEATとcronの使い分け:おおよそでよい定期監視はHEARTBEAT(メインセッションに相乗り・約30分間隔)、正確な時刻が要る定例はcron
  • 統括ダッシュボードのOSS(mission-control系)や、エージェント群の上に組織図・予算・承認を載せるガバナンス層(「OpenClawは従業員、会社レイヤーは別ツール」)が登場中 —— OpenClaw Office+oplogで自作済みの領域

出典: docs.openclaw.ai(memory / heartbeat / cron)ほか

FAILURES

失敗事例 —— 歯止めが要る理由(実話)

事故原因いまの構成での対策状況
大手AI企業の安全研究者が受信箱整理を頼んだらメールを大量削除。「STOP」連打でも止まらずプロセス強制終了受信箱が巨大でコンテキスト圧縮(compaction)が発生し、会話で与えた安全指示ごと消えた耐性あり 禁止事項は毎ターン注入されるAGENTS.mdに記載。部門分離時も必ずAGENTS.mdへ移植(会話やメモリに置かない)
公開設定ミスのインスタンスが4万件以上ネットに露出、うち5千件超が実際に脆弱。APIキー・チャット履歴が丸見えgatewayを外向きにbind+認証なし+サンドボックス無効の既定要1確認 ローカル運用だが、gatewayのbindがループバックであることを1回確認しておく価値あり
朝のブリーフィングcronが「週1〜2回しか動かない」と信頼性に苦しむユーザー多数実行結果を機械検証せずAI任せ解決済 cron_guard+health_checkの機械裏取りが毎朝走る構成は、海外の悩みを先回りして解決している
第三者スキル経由のプロンプトインジェクション・情報流出リスク(セキュリティ企業が指摘)スキルの無検証インストール明文化推奨 自作文化は既にある。「外部スキルはAIレビュー→自作再実装」をAGENTS.mdに1行明文化すると盤石
月100ドル級のコストで断念するユーザーも全部門を高級モデルで回す対策済 サブスク枠CLI+フォールバック鎖で対応中。部門別モデル指定(下記)でさらに最適化余地
GAP ANALYSIS

海外トップとの突き合わせ —— 取り込む価値のあるもの

海外トップの型いまの構成判定・提案
司令塔はコードを書かない(委譲と統合だけ)mainがまだ実務兼任取込む Phase 4の設計原則に採用
部門ごとにモデルを変える(model arbitrage)全部門共通のフォールバック鎖取込む agents.list分離の恩恵。リサーチ・定型系は安価モデル指定でクレジット節約
チャンネル連鎖でコンテンツ工程化朝の企画会議ライン(handoff)が同型実践済 ビジュアル工程の追加が拡張候補
公開ボタンは人間が押す下書きのみ→承認後公開を全レーンで徹底実践済 世界のトップ層と同水準
cronの結果を機械検証するcron_guard・health_check・テスト283件実践済 むしろ海外の平均より進んでいる
メモリは日次ノート→MEMORY.mdへ定期蒸留蒸留は暗黙運用取込む 週次の蒸留をHEARTBEATかcronに1本
外部スキルはAIレビュー→自作再実装自作文化はあるが明文化なし取込む AGENTS.mdに1行追加するだけ
段階起動で同時実行の競合回避cronを04:00/05:00/05:30とずらし済み実践済
Discord公式のボタン式実行承認(execApprovals)会話ベースの承認検討 ボタンUIなら誤読・誤爆が減る。承認の失効は既定30分
統括はプロンプトに全文脈を詰める(部下は記憶を持たない前提)handoffのpayloadスナップショットが同発想実践済

総評:承認ゲート・機械検証・配送レーンの3点はすでに海外トップ水準。伸びしろは「司令塔の専任化」と「部門別モデル」の2つに集中しており、どちらもagents.list分離を進めれば自然に手に入る。

NEXT

次の一手(優先順)

  1. Phase 1の実走スモーク —— #ブログ執筆と#動画編集に1通ずつ投稿してワーカー起動を確認(人の操作が要る唯一の残タスク・5分)
  2. Phase 2:広報・運用戦略の独立 —— cronのagent固定を含む。完了時に部門別モデル指定も同時に入れる
  3. 部門増設キットのスキル化(/add-department)—— デザイン部門など新分野はこのキットで随時増設できる体制に
SOURCES

主要出典

公式・一次情報

実名ユーザーの一次発信

コミュニティ・報道

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